今週の初め、モルディブでは驚くべきニュースが報道されました。
シックスセンシズ・ラームのGM(総支配人)が数名の従業員に襲われ、頭に酷い怪我を負ったそうで、すぐに最寄りの病院に緊急搬送されましたが、幸いにも無事でリゾートに戻ったそうです。
私はシックスセンシズのリゾートに滞在したことがないので面識はありませんが、経歴によると2011年の夏からGMとして、2021年の夏からはモルディブのラームとカヌフラを含むエリアの統括マネージャーとして働いているようで、現場スタッフの意見はさておき、企業からは高く評価されているようですね。
警察の初期発表によると、GMが先日リゾート内を自転車で移動中に従業員に襲われ、頭部を負傷したとのことですが、その後の詳細な情報はまだ明らかになっていません。
SNSなどで出回っている情報によると、従業員用の宿舎近くを歩いているGMを、待ち伏せしていた覆面をした3人の従業員に木の棒で数回頭を殴られたとのこと。
現在のところ、逮捕者は出ておらず、シックスセンシズ・ラームからも公式な声明は発表されていません。
職場の人間関係は様々ですが、特に厳しい上司に対しては反発が起こりやすく、敵が多くなることがよくありますが、今回の事件は、ラームのGMに対するモルディブ人従業員の扱いに関する一連の疑惑に続くもののようです。
モルディブのリゾートで働く従業員のSNSを以前からチェックしていましたが、ラームを含む幾つかのリゾートで、マネージメントや企業に対する従業員らからの不満の声が数件上がっていました。
いくつかのリゾートの従業員から、サービス・チャージが未払いであったり、ゲストが米ドルで支払ったサービス・チャージがモルディブの通貨で支払われたこと、従業員の食事が質素であること、セクハラ問題、マネージメントがVIPゲストからの高額なチップを独占していること、さらにはパワハラ問題としてGMや人事担当者に対する不満が寄せられています。
今回のラームでの事件では、2023年頃からラームの従業員を名乗る人たちがGMに対する怒りの声や、政府へのSOSを何度も発信していたので、もし本当ならどれほど独裁的なトップなのか気になっていました。
モルディブのニュースメディアのFacebookページに投稿されたニュースのコメント欄は、英語のコメントしか理解できませんでしたが、数多くの批判と支持の意見で溢れています。
モルディブで働くスタッフのSNSを再度読んでみたところ、ラームでは以前から何人かのスタッフがGMを暴君として扱い、劣悪な労働環境で奴隷のように働かされているという声が上がっています。
また、モルディブ人やアジア人に対する人種差別的な発言や、外国人スタッフが優遇されるといった差別の告発も多く見受けられます。
さらに、GMのもとでインド人女性の人事担当者による不公平な職場慣行が行われているとの主張もありました。
SNSで見かけた投稿の中で、英語で書かれたコメント内容を古い順にいくつかピックアップしてみました。
*毎晩、すべてのライン・スタッフの宿泊所のエアコンが切られているため、暑くて眠れず、十分に休むことができません。
*会社は最低サービスチャージが300ドルだと言っていますが、先月のサービスチャージは245ドルでした。
*コロナ以降、リゾートは人手が足りず、稼働率が高いのに仕事が山積みになっています。
*GMは、スタッフや部署に対して差別的な態度を取り、モルディブ人のスタッフが何かをすると警告書が出されて解雇されます。
*ボーナスは外国人スタッフに多く支給されており、毎年ラマダン手当がボーナスから差し引かれています。
*GMはまるでロバのようにスタッフを叱責し、私たちが奴隷であるかのように扱います。
*バケーションの日程については常に合意がなく、勝手に決められてしまいます。
*私たちはマネージメントの要請があれば、いつでも出動しなければならず、各部署のマネージメントの指示はGMから出されます。
*GMは、私たちが休暇中にも何か計画があることを理解していないようです。
*バケーション中に急に翌日から休むようにとの要求があり、それに応じなければなりません。
*突然のバケーションの要請があった場合でも、チケット代をスタッフが負担しなければなりません。
*各部署のマネージメントには権限が与えられておらず、GMがすべての業務を細かく管理しています。
*ほとんどのスタッフはGMを恐れています。
*ラーム環礁出身のスタッフが働いている理由は、自分の家から近いというだけの理由。
この投稿に対しては、賛同のコメントもあれば、「これまでのリゾートの中で、ラームのGMが一番優秀で尊敬に値する人物だ。」とか「これは捏造だ」といった反対意見のコメントも幾つか出ています。
別の日の投稿には。。。
「GMは、人種差別や外見による差別を訴えられ、特に地元のスタッフに対する不当な扱いが問題視されている。彼女の経営スタイルが原因で、何人かの部門長が退職している。地元の人々は、明確なガイドラインがない給与の天引きや、外国人スタッフとの不公平な扱いについて不満を持っている。また、ボーナスやサービス料の差し押さえについても声が上がっている。過剰な怒鳴り声や経営の透明性の欠如も懸念されている。職員は発言による報復を恐れているが、メディアへの露出や政府の介入を求めることも検討している。」
それに対するコメントは。。。
「他人の進歩を恨むのはよくあることで、特に自分に自信が持てずに苦しんでいるときはなおさらだ。多くの人が一生懸命働いているのに、迷いを感じている。ソーシャルメディアは成功を見せつけ、宗教は孤立と助言を与える。嫉妬には限界がある。」
「シックスセンシズ・ラームは素晴らしいリゾートだが、常に業績が振るわずで、その原因は誤ったリーダーシップにある。」とリプライされていました。
今回の事件の発生後に投稿された内容には。。。
「 この悲劇的な事件は、見過ごすことのできない、より広範囲にわたる厄介な暴力パターンを浮き彫りにしている。個人に対する暴力は決して許されるものではなく、根本的な深刻な問題を反映しています。このような事件の根本原因は、しばしば劣悪な経営慣行や従業員の権利の侵害、労働者間の不満の高まりに起因しています。残念なことに、経営陣から現場のスタッフに至るまで、あらゆるレベルの従業員がその尊厳と法的権利を無視された体系的な虐待にさらされています。多くの人々は基本的な権利を奪われ、現代の奴隷制度と呼ぶべき状況で働かされています。
私たちは2024年、モルディブ労働関係当局、モルディブ観光従業員協会(TEAM)、モルディブ観光省、モルディブ共和国の関係機関にこれらの懸念を訴え、このリゾートの憂慮すべき状況に注意を促しましたが、こうした重大な懸念に対する実質的な対策は講じられていません。さらに、政府のドル交換レートの最近の変更が状況をさらに悪化させ、多くの従業員を貧困に追い込み、苦境を深めています。
私たちは、シックスセンシズ・ラームにおける経営の失敗に対処し、従業員の権利を守り、すべての人にとって安全で尊重される職場を促進するために、政府が直ちに介入することを強く求めます。この問題に迅速な対処することが、さらなるエスカレートや暴力を防ぐためには不可欠です。」
それに対するコメントには。。。
「モルディブにおいて、白人が権力を握ると、モルディブ人の存在が軽んじられることがある。彼らがこの業界に注いできた努力を理解していないのだ。モルディブ人がいなければ、観光業の成長は実現しなかった。」
「GMは非常に人種差別的で無礼な態度を示している。従業員を奴隷のように扱い、叱責の際に使う言葉は人間として許されるものではない。彼女はモルディブの土地にいるため、少数のモルディブ人に対してのみ友好的に接しているが、これは持続可能性を装った単なる政治的行動に過ぎない。彼女のアジア人に対する普段の言動は、明らかな侮辱である。ある日、彼女が職員食堂に入った際、パンを皿に盛っているアジア人を見かけた。彼女は「ここで質の高い食事ができるのは幸せなことです。あなたの国でパンを見たことがありますか?」と発言した。誰もが差別や屈辱に直面しているが、それを認めたり抗議したりする勇気を持つ者はいない。彼女は女性差別主義者であり、まるで島の女王のように人々を解雇している。解雇される際、多くの人々は島を脱出するまでにわずか10分しか与えられない。モルディブ政府は、このような偽善者をブラックリストに載せるための適切な措置を講じるべきである。シックスセンシズは、彼女を二度と雇わないよう再考すべきである。この魔女が我々スタッフを軽視しているのを、ゲストであるあなた方は楽しんでいるのでしょうね。」
現在もSNSでは多くの意見が交わされていますが、英語のコメント読むと推測できることがあります。
シックスセンシズ・ラームはラーム環礁の近くに位置し、周囲に大きなリゾートがないため、スタッフの約70%がラーム環礁出身のようで、それぞれに家族が住む島に近く、通勤または休暇の際の移動に便利なことから、このリゾートで働くことを選んでいるようです。
多くのスタッフが他のリゾートでの勤務経験がないため、現在の環境がどれほど恵まれているのか、あるいは厳しいのかを理解できていない可能性もあります。
外資系リゾートで働くことになった、経験の少ないナイーブ(世間知らず)な人は、最初は与えられた仕事を淡々とこなすかもしれません。
しかし、外資系では個々の成果が給与や昇進に直結するため、モチベーションが高まりやすい一方で、指示されたことだけをこなしていると、なかなか給与が上がらず、システムを理解していないと「どうして自分だけ評価されないのか」と感じてしまうことがあります。
その結果、昇進していく同僚に対する嫉妬や、認めてくれない上司や経営陣への不満が募ることもあると思います。
外資系リゾートは、自己成長やキャリアアップを目指す人にとっては魅力的な職場ですが、「家族がいる自分の島に近くて、大きなリゾートだから給与や福利厚生が良さそう」といった漠然とした理由で応募すると、実際に働き始めたときに、外資系特有のスピード感や同僚とのモチベーションの違い、何から手を付ければ良いのか分からないという状況に戸惑い、モチベーションは下がり、孤独感や嫉妬心が生まれ、そしてレイオフされると、理由がよく分からないまま、最終的にはその不満が経営陣に向かうことになるかもしれません。
また、家族と離れたくない、通勤時間を短縮したいという理由から、遠くのリゾートで働く選択肢がない場合、ストレスや不満が更に増すこともありますよね。
あとラームのGMが本当に人種差別的な発言をしていたのかどうかについてですが、英語があまり得意でないために冗談を真に受けてしまうケースがたまにあるので、実際のところははっきりとは分からないですが、もしそれが事実であれば、我々マイノリティのゲストにとっても残念なことですね。
モルディブの観光業界では、10年くらい前からリゾート経営者と従業員の間で労働争議が時折発生しており、職場環境やスタッフの待遇についての問題が浮き彫りになっています。
もちろん、モルディブ人でも努力次第で認められ、トップに立つことができる企業もいくつかあり、代表的な企業には、ミライドゥやノヴァ、マンタ・エアなどを含むユニバーサル・リゾーツのグループや、クダドゥ、カギ、TMAなどを含むクラウン&チャンパのグループがあり、どちらも観光業界の老舗で、多くのモルディブ人がマネージメントに起用されています。
一方で、リッツ・カールトンやウォルドーフ・アストリア・イターフシ、シックスセンシズなどの外資系リゾートでは、マネージメント層に外国人スタッフが多く見られます。
ノヴァのモルディブ人GMは、モルディブのリゾートのレストランでレジ係としてキャリアをスタートして、経験と訓練を積み重ねて、数少ないモルディブ人GMの一人に成長し、現在はノヴァで働く若いモルディブ人スタッフのメンターとして人材育成に力を注いでいますが、ノヴァのスタッフは皆笑顔で楽しそうに働いており、GMを父親のように慕って何でも気軽に相談できる関係を築いており、ノヴァで働くことに誇りとプライド、そして向上心を持っている姿が印象的でした。
シックスセンシズ・ラームでは、SNSのコメントから、キャリアのあるスタッフから尊敬されているGMの印象を受けましたが、もしかしたらマイクロマネージメントが行き過ぎていたり、エントリー・レベルのスタッフに対するモルディブ人のメンターや相談窓口が不足していたのかもしれませんね。
長い間不満を訴えていたり、政府機関に支援を求めていたにもかかわらず、全く対応されなかったことが、今回の襲撃事件の引き金になったようなので、今後はリゾートも従業員のケアを重視する必要がありますが、政府機関も従業員の意見に真剣に耳を傾け、モルディブ人労働者を守るための労働基準法を整備することが重要かもしれませんね。